2005年11月21日

メモ57「日中戦争の責任論とか」

青狐さんのブログで紹介されていた、ユリアさんという方のコメント欄に書き込み
してみた。
すると、Apemanさんという方からコメントを頂いたので、こちらに感想を書くことに
します。
・一般の人がブログ上で政治ネタを書くこと

>さて、「たまたま靖国神社の話題を書いただけの、普通の方のブログは見逃してあげ
>るべきでしょう」とのことですが、私も別段現代史を専門にしているとか趣味にして
>いるといったことのない「普通の」人間ですから。

 ふむ……。「普通」という言葉も幅が広いようですが、歴史や戦争責任を題材にたくさん記事に書いている方と、日常生活ネタを主体としていて「靖国」についてたまたま触れた方とでは、同じ分類にはできないと思います。たとえば、自分の気に入らない記事を削除させるとか、ブログ閉鎖に追い込むとか、あるいは自分と同じ思想にさせる……というような「政治的」な目的があるのなら別ですが(困ったことですが)、あえて手を出さないか「ほどほど」で切り上げるのが大人の度量ではないでしょうか。

 そういう語り合いを相手が望んでいるかどうか、または上手く話を膨らませられそうか。そうした状況を見極める能力と「言いたい気持ち」を上手く抑制して文章にする自制心が、ブログ上で議論をする際に必要な能力だと考えます。

 現状ですと「南京事件」について懐疑的な記事を書いたブログは、軒並み青狐さんから糾弾されそうで怖いですね(苦笑)。ご本人は義憤のつもりかもしれませんが、その結果に有意義なものが残るかどうかは疑問です。所詮、議論というものは自分の「現在位置」を確認するためのものであって、新しい知識を得る「きっかけ」以上のものではありませんから。

・南京事件について

>「20万人しかいないところで30万人殺すことはできない」のが左右に関係なく認めね
>ばならない当たり前のことであるのと同じように、「20万人しかいなかったことが確
>かでないのなら、30万人殺されたという主張もデタラメとは言えない」こともまた、
>左右に関係なく認められるべき、当たり前のことでしょう。

 それでは、Apemanさんは諸説あるなかでどれを信じているのでしょうか? ちなみに、中国政府は公称で「35万人」としているし、日本国内の一部教科書では「40万人」と表記している所もあるようです。どうも、人口の数を曖昧にすることで、人数を水増ししているようにしか見えないのですが……(四捨五入もありそうですね)。
 こういう状況では「あったはず」と信じる日本人こそが困るはずです。むしろ、中国政府に厳密さを求めるべき立場なのではないでしょうか。

 本来ならば「外交カード・反日政策」といった都合から切り離して、日中合同で学術的に調査されるべき題材です。責任を放棄した蒋介石や唐生智・南京市街で自国の市民から略奪した国民党軍の問題・日本軍の進撃ルートと戦闘経過・敗残兵となった国民党兵士の逃走ルート・潜伏先・安全区で起きた犯罪や便衣兵の摘発・当時の日中外交の経緯……、そうしたものは正確に分析されて記録にするべきでしょう。
 それが出来ないのは中国政府の事情であって、日本の責任ではありません。かの国の「政治」が「分析」を許さない現状こそが最大の問題点なのです。

 また、日本政府が中国に弱腰なのは、政府関係者や外務省の人間が過剰な贖罪意識を持ちつつも、正確な歴史的経緯などを知らなかった点にあります。国際外交の世界では、相手になるべく無防備なままでいてもらい要求を通しやすくするのは当然。将棋の対戦相手に、わざわざ良い手を教えてあげるお人好しがいないのと同様です。真剣勝負ならなおさらのこと。
 日本政府(日本人)は、もっと彼らの現実主義でタフなところを見習うべきなのかもしれません。
 
 仮に50万人殺していたと判明した場合でも、現在の国益を失わないために外交圧力を跳ね除け、自国の要求を中国政府に飲ませることが「政治」であり、日本政府が課せられた使命です。逆に、新たな日本人居留民の虐殺が判明し、中国政府に抗議したとしても「謝罪」など彼らはしないでしょう。「反日デモ」の時もそうでしたね。
「政治」という現実面の対応とはそういうものです。

 さて、政治と切り離した「分析」も必要ですが、Apemanさんのような方には「現時点の中国政府の公表数値はもっともである/部分的には信じてもよい/あまり信じていないが虐殺はある程度あったと思う」……くらいの明確な立場表明をしていただきたい。
 水掛け論やゴールのない議論をする気はありません。

・ロシアの南下政策とか

>これがなにごとかを証明しているのであれば、「日本」という名の軍艦をロシアが配備
>していなかったこともまた注目されてしかるべきでしょうね。

 ……ロシアが朝鮮半島を欲していた事はわかりますね? 朝鮮半島にロシア海軍の基地が置かれたら、日本はロシアの勢力下に置かれてしまう。それを避けるための「朝鮮の独立と近代化・親日政権の維持」が日清・日露戦争の意義でした。日韓併合も結果的なものであって、日本政府が当初から計画していたものでもない(同盟国にして、現地政府に防衛させた方が軍事費も安上がり)。
 ここの認識が違うということは、よほど読んできた本が異なるのか、ロシアが採ってきた政策をあまり知らない方なのかもしれませんね。

・その他

>動員する/されるの違いはお分かりですよね、もちろん?

 いいえ、よく意味が解りません。徴兵された一般兵は被害者であり、動員を決定した政府関係者は加害者という考え方があるんですか? それを言い出すと、徴兵制だった当時の国民国家のほとんどはそういう分類になりますけれど。

>例えば「殺害され続け」た在中邦人はいったいなぜ・どのような資格で中国に行きそこ
>でなにをしていたのか、「条約」とはどのような経緯で結ばれたどのような内容のもの
>だったのか、などなど。

 在中邦人は日本企業の関係者・炭坑などの単純労働者(現地企業と数年単位での契約)・租界のビジネスチャンスに期待した移住組などが挙げられます。現在の中国で働いている日本人とほとんど違いはありません。他の外国人居留民も同様です。
 しかし、南京政府の治安維持能力の低下と反英・反米・反日プロバガンダの影響が彼らに及び、多数の犠牲者を出していました。日本人教師夫妻が自宅の警備を依頼した国民党兵士たちに殺害され、金品を奪われるなどの事件が典型的。
 上海事変も国民党軍が租界に攻撃をかけてきた事が発端となっています。外国人が殺害・国民党軍が攻撃⇒外国の警備軍が反撃⇒停戦⇒反外国人プロパガンダで失敗を糊塗⇒最初に戻る。こんなパターンの繰り返し。

 あまりご存じでなかったのなら、調べてみてください。

>だったらどうだというのですか? 「中国全土を支配して領土化するようなプラン」
>がない以上南京事件もなかった、などとおっしゃってるわけではありませんよね?

 意味がよくわかりません。僕は南京事件というもの自体、終戦時の戦犯裁判に必要だったためにデッチあげられたものだと考えています。……が、支那事変と南京事件の真偽に関係はありませんね。
 支那事変は中国全土の占領を狙った「侵略戦争」ではなかったとご理解いただけたなら幸いです。そういう言葉は、ソ連のバルト三国併合やフィンランドを侵略した「冬戦争」などに当てはめるべきですからね。
 ちなみに、そういうプランが無いと「日本軍=侵略者」という説明がつけにくいので、中国の歴史教科書では「田中上奏文」が載せられているそうです。……この内容の真偽についてはご存じですよね?

・歴史観とか

>多数派の「感覚」とは断絶しているからといって、それがどうだとおっしゃるの
>でしょうか?

 本多勝一も述べていた事ですが、数の多寡と正確さが正比例するものとは限らない。ですが、数が多くないということは、多くの支持を得られない理由があるとも言えます。前の世代から受け継がれてきた自然な「歴史観(歴史感覚)」と、政府や一部知識人の都合によって作り出された「こうあるべき」という人工的な「歴史観」のどちらに信頼性が置けるでしょうか。

 どちらも「人の手」が入っているという意味では「人工的」ですけれどね。
 学問をされている方なら、自分がどういう歴史観を持っているのか明快にされるといいかもしれません。

 こんなところです。



Posted by 野良猫 at 05:00│Comments(0)TrackBack(2)戦争責任/南京事件

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この記事へのコメント
ところで、野良猫さんは

> それでは、Apemanさんは諸説あるなかでどれを信じているのでしょうか?

といった具合に、相手に対しては「立場」をはっきりさせることを要求するのに引き換え、ご自分は「立場」をはっきりさせないままおはなしを続けられる癖がおありのようにお見受けします。

例えば、
http://d.hatena.ne.jp/jimusiosaka/20050928/p1
において、jimusiosakaさんが「インテリジェント・デザイン」説を紹介したやり方を批判するコメントをお書きになられたのに、結局野良猫さんがインテリジェント・デザイン説をどうお考えなのか明らかにされないまま、いつのまにか話題を「百人斬り」にスライドさせてしまった、ということがありますよね(ところで、本多勝一の本は「選り好み」せずにもう読まれたのでしょうか)。
参考までに、インテリジェント・デザイン説をどう評価しておられるのか、教えていただければありがたいのですが。
1)単なるトンデモ
2)創造説の焼き直し
3)説得力はないがいちおう科学的仮説の体裁は整っている
4)進化論と対抗できるほどの科学的仮説である
5)進化論のようなまやかしとはちがって、真理である
6)その他(具体的に)
Posted by ゲスト at 2005年11月24日 23:22
それから、

> ……ロシアが朝鮮半島を欲していた事はわかりますね?

とお書きですが、これは一体いつの時点での認識なのでしょうか? ロシアの対外政策だって時期によって変わっているわけで、日本の特定の選択を正当化したいならもっと時期を特定していただきたいですね。
Posted by ゲスト at 2005年11月25日 21:26
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